歯科医院に潜む感染リスク:「エアロゾル」

歯科医院のスタッフは常に、B型・C型肝炎、HIV、結核菌などの感染源にさらされています。歯科医療従事者はコロナウイルスの感染リスクが最も高いという調査結果も発表されました。※1
回転器具、超音波スケーラーやパウダージェットハンドピースの使用によりエアロゾルが発生します。エアロゾルは切削片や歯磨剤だけではなく回転器具からの冷却水、唾液、血液、分泌物を含んだ霧状の汚染水で、医療現場での高感染リスクに分類されます。
感染リスクを軽減するためには、口腔内バキュームを使って正しく吸引を行うことが非常に大切です。直接エアロゾルが発生する箇所から吸引することによってのみ、エアロゾルが診療室中に飛散するのを防ぐことができます。これにより、病原体を含んだエアロゾルによる汚染を最小限に抑えることができます。

歯科治療中、バキューム不使用でエアロゾル飛散
バキュームを使用しない場合、エアロゾルは拡散します…


歯科治療中、バキューム使用でエアロゾル除去
キューム使用により、エアロゾルが除去されます。

エアロゾルの危険性

  • 口腔内には600種類以上のバクテリアが存在。唾液1㎖に約1億のバクテリアが存在※2
  • C型肝炎の患者の唾液1㎖に約2,000のウイルスが存在。※3
  • COVID-19患者の唾液1㎖に約158,000のウイルスが存在。※4
  • 個人防護具(PPE)を付けずに15分間治療を行うと、患者さんの唾液約0.014µℓ0.12µℓがエアロゾルを介して吸入されます。※5
  • エアロゾルによる半径数メートルにわたる汚染。※5,6
  • アームレスト、ライト、キャビネットなどの環境表面を汚染。※7
  • 交差汚染による患者の感染リスクが高い。

口腔内バキュームによるエアロゾル除去

歯科診療時の口腔内バキュームによるエアロゾル除去法について、ドイツデュールデンタル社のアカデミーで研究が行われました。※8

結果(下記グラフ参照)
  •  バキューム吸引量300ℓ/分以下: エアロゾルの粒子の完全除去は困難
    ▶吸引量300ℓ/分以下のバキュームの使用はエアロゾルの完全除去には不十分です。尚、吸引量300ℓ/分以下(200ℓ/分以上)の場合でも、バキュームチップの適切な位置/使用によりエアロゾルは部分的に減少できます。
  •  バキューム吸引量300ℓ/分以上: エアロゾルの粒子は観測されず、エアロゾルを完全に除去することが可能
    ▶吸引量300ℓ/分以上のバキュームを使用することが最も重要なポイントです。
  • 口腔内バキュームを正しく使用することでエアロゾル除去の効果が上がります(カニューレの先端を常にエアロゾル発生源に近づけ、効果的にエアロゾルを除去する)。
  • 大きいカニューレ(16㎜)は小さいカニューレ(11㎜)より吸引効果が高いです。
    ▶大きいカニューレ(16㎜)の使用を推奨します。
グラフ:バキューム吸引量によるエアロゾルの減少率
⇦左図
この研究は、異なるサイズのカニューレ、バキュームハンドピース及び吸引量でエアロゾルの粒子を計測したものです。吸引量200ℓ/分未満ではエアロゾルの減少は遅く、除去効果も不十分です。グラフのカーブは、計測平均値をもとに示されています。

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バキュームの吸引量を決定する要因は、カニューレ、バキュームハンドピース、デンタルチェア、配管、バキュームモーターです。

口腔内バキューム吸引量300ℓ/分でのエアロゾル除去 ― Dr. ヴァセル(歯科医師)のインタビュー

科学論文の参考文献リスト

※1 Peng et al. (2020): 2019-nCoVの感染経路と歯科医院での感染管理、口腔科学のインターナショナルジャーナル(2020) 12:9
Peng et al. (2020): Transmission routes of 2019-nCoV and controls in dental practice, International Journal of Oral Science (2020) 12:9
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※2 ゲノムリサーチ(2009), DOI: 10.1101/gr.084616.108, ヒトの唾液細菌叢における多様性について
Genome Research (2009), DOI: 10.1101/gr.084616.108, Global diversity in the human salivary microbiome
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※3 Xavier et al. (2015):慢性C型肝炎感染患者の唾液中ウイルス量の評価、感染症と公衆衛生ジャーナル、Vol 8, Issue 5, 474-480
Xavier et al. (2015): Evaluation of viral load in saliva from patients with chronic hepatitis C infection, Journal of Infection and Public Health, Vol 8, Issue 5, 474-480
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※4 Kai-Wang To et al. (2020): SARS-CoV-2感染中の後部口腔咽頭唾液サンプル中のウイルス量と血清抗体反応の時間的プロファイル:コホート観察研究、ランセット、感染症
Kai-Wang To et al. (2020): Temproal profiles of viral load in posterior oropharyngeal saliva samples and serum antibody responses during infection by SARS-CoV-2: an observational cohort study, The Lancet, Infection Disease 英語のオリジナル出版物はこちら|Googleの日本語翻訳はこちら 
※5 Bennet et al.ブリティッシュデンタルジャーナル、V.189 No.12 (2000)、一般歯科診療における微生物エアロゾル
Bennet et al. British Dental Journal, V.189 No.12 (2000), Microbial aerosols in general dental practice 英語のオリジナル出版物はこちら|Googleの日本語翻訳はこちら 
※6 Drisko et al. (2000):ポジションペーパー:歯周治療における音波および超音波スケーラーの研究、科学と治療、ジャーナル・オブ・ペリオドントロジ 71, 1792-280
Drisko et al. (2000): Position paper: sonic and ultrasonic scales in periodontics. Research, Science and Therapy, Journal Periodontol 71, 1792-280 英語のオリジナル出版物はこちら|Googleの日本語翻訳はこちら 
※7 Graetz et al. (2014):歯科診療における飛散汚染―どのように予防できるか?Rev.Med. Chir. Soc Med. Nat. Iasi – 2014 – vol 118, no.4
Graetz et al. (2014): Spatter contamination in dental practices – how can it be prevented? Rev.Med. Chir. Soc Med. Nat. Iasi – 2014 – vol 118, no.4
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※8 Koch,口腔内スプレーミスト吸引によるエアロゾル削減、ホワイトペーパー2020-09デュールデンタル社アカデミーでの研究
Koch, Aerosol reduction by means of an intraoral spray mist suction, Whitepaper 2020-09 internal study at Dürr Dental Academy
Tillner A (2016):バイオフィルム除去時の新開発カニューレ使用による有効性に関するインビトロ研究、キールのクリスチャンアルブレヒト大学医学部
Tillner A (2016): In-vitro Studie zur Effektivität der Saugleistung mittels einer new entwickelten Saugkanule wahrend der Biofilmentfernung, Dissertation an der Medizinischen Fakultät der Christian-Albrechts-Universitat zu Kiel
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Barnes et al. (1998):超音波使用で発生したエアロゾルによる血液汚染のインビボ研究、ジャーナル・オブ・ペリオドントロジ 69, 434-438
Barnes et al. (1998): Blood contamination of the aerosols product ed by in vivo use of ultrasonics. Journal of Periodontology 69, 434-438
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Coleman et al. (2010)—歯科医院内の微生物バイオフィルム管理:複数リスクの軽減、ジャーナル・オブ・インフェクション・プリベンション 11/2010 Vol.11, No.6
Coleman et al. (2010) – Microbial biofilm control within the dental clinic: reducing multiple risks, Journal of Infection Prevention 11/2010 Vol.11, No.6
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